現在の予約可能枠は11/18-20, 29, 30, 12/13-16, 19-24, 28 (西部)11/18, 29 12/13~15,20,23,24,28日(是澤)です。

木管楽器における「管楽器調律」について

※是澤が「管楽器調律」に出会った頃に書いた文章を修正して掲載しております。

目次

そもそも楽器とは繊細なもの

オーボエという楽器と付き合っていると、とても繊細な楽器本体であること、そして更に繊細なリード…
そのどちらも、ちょっとしたことで状態が変化することはよく分かってきます。

これまでに楽器の改良改善のための実験や仕様の変更等、楽器メーカー側と協力しながら、様々に行って来ました。
もう少し自分の演奏をやりやすくしたいとか
こうなって欲しいといったことに対して
本当にちょっとしたことの変更が「音」に対しては大きな変化に繋がったりすることを体験しています。

大きな変更で言うと、
キーのメッキ処理の素材を変えたり、
ベルやパーツを変えたりすれば、
当然楽器の個性も大きく変わりますが、
例えば、小さなネジ一本の素材や形を変えることでも響きや音色、吹き心地や音程の取り具合等が変わってしまうことは
「よくあること」
と感じています。
なんなら直接は調整とは関係ないキーの芯がねの締め具合、オイルやグリスの変更でも当然変わると思います。

なので、世の中にある「楽器の響きが良くなる」等と称して売り出されている全ての製品に、
何かしらの効果は必ずあることは納得出来ます。
それらを付けたり、変更したりすることで、その人の好みになるかどうかは別として、
元の状態から何かしらの変化はするでしょう。

ただし、「音」に関して、数値化出来る情報はいくつかあっても、それら全ての情報が良いとか悪いとかのジャッジに繋がることは少なくて、結局は本人の好みや慣れ次第だったり、好みの感触かどうかといった体感的なことが基準になるのがとても難しいことなのかも知れません。
あとは聴いている人の反応や感想だったりとかも数字以外の情報。

そして、それらの事象や感覚を言語化して共有することの難しさ…。
だからこそ楽器は面白いとも言えますが。

管楽器調律との出会い

そんな中で、他の管楽器、特に金属製の楽器において話題になっていた
管楽器調律
という技術を知ることになったのが、約3年くらい前。

ガスバーナー等の炎を使った調整方法で、一般的な「焼き鈍し」とは違う方法で、物体の振動伝達の効率を良くするとのこと。

とはいえ、木が材料の楽器には無理だろうなぁ、と思っていたら、
熱を加えるわけではないので、と、まさかの大丈夫ということが判明。
というか、価格表に普通にサックス以外の木管楽器も明記してある。

そこから勇気を出して連絡をし、完全自己責任と腹を括って飛び込んだのですが、とにかく驚くようなことばかりで、個人的には3年経った今でも本当にやって良かったと思わされることばかりです。

まず「管楽器調律」で行われていることは、オカルト的なことでも、プラシーボ効果でもなく、
「理由ははっきりとは分からないが、現実として確実に起こっている変化」と言えます。
そして、驚くほど分かりやすく、変化がある手段だと思います。

そして、ここまでの鳴りや響きの変化、吹奏感の向上はこれまで様々な実験や調整、カスタマイズをやってきた中では感じられなかったくらいでした。(詳しくは後述します。)
正直、今までなんだったのレベルのことが起きたように思いました。

こういうことを書くと、より怪しまれますが、どんな楽器にも使える技術で、例えば音を出すものや、響かせるものなら
どんなものにも使える技術なんだそうです。

管楽器調律研究所(当時)の和田さんや西部くんは、一つ一つ丁寧に、これから行う作業についての説明をして頂けますし、かなり入念に事前の診断を行い、仕事も非常に丁寧で確実です。

楽器という非常に高価で、代えの効かない物を扱うため、当たり前のことなのかも知れませんが、ここまで技術を構築していくために数多くの実験や失敗があったと伺いました。

長年の研究や実績があるからこそでしょうが、僕らが想像する何周も先の発想や技術を持っていると思わせる話や仕事っぷりにいつもワクワクさせられます。

木管楽器奏者として気になること

木管楽器奏者として気になるであろう話をいくつか書いていきます。

まず、炎を使うことによっての楽器に対する悪影響ですが、
当たり前のことですが、燃えた、こげた、タンポやコルクが外れる、キーオイルが無くなってしまう…
といったことは一切ありませんでした。

高速で炎を動かしながらの作業なので、炙っているように見えますが、本体やキーに熱はほとんど伝わっていません。
調整が狂うような熱は入りません
(金属の楽器の場合、熱を入れることも行うそうですが、それでもハンダが外れるとかそういうレベルの高温にはしないし、
ならないそうです。そして、熱が入ると困るものに対しては、熱が入らないように慎重に作業が行われており、
それでも調律としての作業が可能なのだそうです。)

そもそも楽器を手で直接持って作業をされているので、楽器が熱くなろうものなら、手が耐えられないと思われます。
実際作業を見ているといまだにハラハラしますが、問題が起こったことは一度もありません

初回の調律の後、事後報告ですが、いつもお世話になっている楽器調整の技術者の方に説明して、確認してもらったところ、
炎の影響と思われる楽器調整の狂い等は一切無いと判断して頂きました。 
これは今でも度々、月一ペースくらいで確認していただいていますが、全く問題は起こっていません。

また、3年間何度となく調律、微調整を行なってきましたが、年数が経っても効果は変わり無く、それによっての不具合も起こっていません。むしろ進化を続けている印象です。

調律の原理…「本当は何が起こっているのか」はまだまだ分かっていないことだらけで、今でも不思議ばかりです。
「科学的に証明されていないから」と避ける人も多いと思いますが、世の中にも、我々の楽器演奏においても
なんだかよく分からないけど、やってみたら役にたつもの、良かったもの
というのは道具にせよ、奏法にせよ沢山あるわけなので、今後原理が分かってきたら嬉しいですが、現状でも悪いことが起きない限り、試してみる価値は大いにあると思っています。

ここからはこれまでに感じてきた管楽器調律のメリット、デメリットみたいなものを明記していきます。
サイトにも書いてあるメリットと重複する点もありますが、あくまでも個人の感想です。

メリット

・楽器の鳴り方(音量や響きの多さ等)が劇的に改善される。

・音の「ツボ」みたいなものがとても分かりやすく、操作しやすくなる。

・音域によっての鳴り方の不揃いさが無くなり、スラスラと演奏していけるような感覚がある。

・吹奏感の改善があり、吹いていて楽に感じる。

・楽器の反応が良くなるように感じるので、発音の怖さが減る。

・楽器の振動効率が最適化されるからなのか、音色の変化等の様々な変化がやりやすくなる。

・以上のようなことの微調整や程度、具合を変更可能。管楽器調律師との相談により、もう少しこうなってほしい、というところまで調整可能。そして、そのリセットも可能。

・新しい楽器、古い楽器問わず調律可能。これまで、あまり変化させることが難しく感じられるような、ちょっとした響きの違和感なんかは割と簡単に変わる印象がある。

・調整整備もしっかり行われているのに「なんか吹きづらい」「もうちょっとどうにかならないかな」
「もうこの楽器は鳴らなくなったのかな」といった事例には特に効果的であると思われます。

・楽器本体だけでなく、ボーカルやチューブはもちろんのこと、指掛けや指掛けのゴム製のクッション、ストラップといったものにも調律が可能で「装着すると響きが失われる」とか「鳴りが悪くなる」といった現象が無くなり、「むしろつけた方が良い」みたいな謎現象まで起こり始めることもある。特に異素材を楽器に装着する場合等、効果を絶大に感じる。

・メッキや金属の本来の響き、個性が活きるようになるので、例えば素材が金だから妙にキツく感じる、重く感じるということはほぼ無くなる印象。より好みの響きに近づけられる。

・もちろんリードにも調律可能。鳴りや吹きやすさの改善…等々良いことが沢山ある。リードの調整は削ったりするような、普段の調整とは違うベクトルの話だが、やるとやらないでは大違い。正直、リードやボーカル選びは劇的に変わる印象。

・何度か回数を重ねていくことで更なる進化も感じることが出来る印象。

デメリット。及び、気をつけたいところやそもそもの話

・大きな炎と小さな炎を様々な距離で、様々な当て方、かざし方(?)をすることで調律を行うのですが、素人が安易に真似するとすぐに燃える、こげると思われます。僕も自分で調律するようになりましたが、気をつけないと一瞬でこげます。

・微細な響きの変化を聞き分けられる管楽器調律師の耳で聴いての判断も重要になるので、やはり素人が真似することは薦められないと思います。

・楽器の響きが最大効率化するのは間違いないと思われますが、ある程度の状態に引き上げることは可能でも、楽器そのものの設計や素材そのものの良し悪しを超えて変えられるわけでは無い。

・人によっては調律前の元の状態の方が好みだとか、変化が好ましく無いと感じることがあるかも知れない。
ただし、追記にもなるがリセットも可能で、もう少し抵抗感を増やしてとか、方向性も様々に変化させることは出来る。

・オーボエの場合、頻繁にリペアマン等による調整も行うので、タンポやコルクといったものを交換した時や、管体のワレが生じた時は再調律が必要と感じることもあります。もちろん全くの未調律の時よりも良い状態に感じますが、細かいことを言うとそういうところが気になりすぎる可能性。形状の変化、例えばぶつけたりとかそういったことにも、より敏感になります。金属同士が当たってしまうことにもかなり慎重になります。

・火を使った暖房器具等の距離感に敏感になる。(炎から発せられる何かしらの「光」や「線」の効果を使っている可能性がある調律法のため、ある程度の距離感がないと不安になる。)

・出来れば簡単なところだけでも、楽器を分解できるくらいの能力があった方が、より細かいところまで調律を行なってもらいやすくはなるかと思います。
(例・オーボエのベルのキーを外して、バネをかけて元に戻せる程度のこと)出来なくても調律自体は可能です。

といった感じです。

是非、目の前で体験して欲しい!

管楽器調律研究所の和田さんや西部くんとはこの間、様々な意見交換や実験をして来ました。

幸運なことに(?)オーボエでの調律実施例はこれまでほとんどなかったようなので、新たに分かって来たこと、気をつける点等の発見も多くありました。
特に西部くんとは、様々な場所に来て頂いての実験実証を行って来たので、かなりのことが分かって来たように思っています。
(※そして現在、是澤も管楽器調律を行うようになりました!)

作業の映像なんかも動画で見ることが出来たりするのですが、パッと見の衝撃も大きいと思うので、勘違いもされやすいですし、拒否反応を示す方も多いと思います。

実際に、目の前で体験されないとその効果も分かりづらいと思うので、気になる方は是非実際に体験して欲しいです。

今後体験会や、木管楽器に絞った調律会もどんどん企画していきます。

本当は誰にも教えたくない話でもありますが、楽器についての様々な悩みが、こういった方面でも解決出来ること、困っている人には届いて欲しい。
是非、先入観を捨てて飛び込んでみることをおすすめします。

僕もそんなうまい話があるわけないやろって思っていましたが、金管楽器やサックスの方々には、
既に当たり前のように取り入れられている技術だということは頭に置いておきたいところです。

ここまで書いても、インターネット上のこう言った文章はちゃんと読まれなかったりするのは重々承知しているので、直接試したこともない方が、色々意見してたり、批判しているのを話したり、書いたりしてるのを覗き見するのが正直楽しみでもあります笑

いずれにせよ、この技術、知っておいて損はない話だと思いますし、僕にとっては既に無くてはならない技術、知ってしまった今は無かったら困る技術だと考えています。楽器を演奏することがより楽しく感じられるようになり、これからの可能性も含めてとても楽しみですし、誰も出したことがないような音をどんどん開拓しているようなところにも、喜びと幸せを感じています。

好みの違いはあるので、一概に楽器が良くなったと感じるかは人それぞれですが、ここまで自由度が高く操作調整が可能で、方向性やキャラクターも変えられる技術は他にはなかなか無いのではないかと思っています。

改めて、お世話になっている管楽器調律師の皆様、理解のある楽器調整技術者の方々には深く感謝申し上げます。

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